@脾気虚(脾胃気虚・脾胃虚弱・中気不足)
消化吸収能力の低下とともに全身的な気虚の症候をともないます。消化管の運動低下による胃・腸の気滞の症候や,津液輸送・水分吸収の機能低下による。溜飲・庚湿・水腫など伴なうことも多い。肺に影響がおよぶと肺脾気虚,心におよぶと心脾両虚などが生じます。
【主症状】
食欲がない・少食・味がうすい・食べると腹が脹る・便秘で気ばらないと便が出ない。泥状便〜水様便(水分吸収障害)ときに兎糞状の便(水分過剰吸収)などが主で息ぎれ・気力がない・疲れやすい・口数か少ないなどの一般的気
虚の症候がみられます。
舌質は淡白,舌苔は白,脈は軟弱。
【論治】
治法は健脾益気です。党参・人参・黄脅・灸甘草などの補気薬,白丸・山薬・黄精・白扇豆などの補脾薬を主とし,決苓・慧咳仁・蒼尤などの利水薬,陳皮・半夏・縮砂・木香などの理気化湿の薬物を加えます。
【代表方剤】
●補気剤…四君子湯・参苓白朮散などを。
水様便には、
七味白丸散。
胃気滞には、
●補気剤…香砂六君子湯・異功散。
溜飲・舌苔白賦などの湿証をともなうものには、
●補気剤…六君子湯を使用します。
浮腫をともなうときは、
●利水滲湿剤…防己黄蓍湯・四苓散合五皮飲などを用います。
A脾陽虚(脾陽不振・脾陽虚弱・脾胃虚寒)
脾気虚の程度が進んだもので,同化作用の低下・循環不良などによる寒証(虚寒)をともなう,脳の興奮性低下・低タンパクなども関連する。なお,低タンパク血症などによる膠質滲透圧の低下・腎糸球体でのろ過圧低下などにより浮腫が発生しやすく,この場合はたいてい脾腎陽虚の型をとります。
【主症状】
脾気虚の程度が強く,不消化下痢・味がない・口は渇かない・よだれが多い・顔面蒼白・腹が冷えて痛む。(温めたりおさえたりすると楽になる。)寒がる・四肢の冷え・透明なうすい尿などの寒証がみられます。
舌質は淡白で艀大,舌苔は白滑,脈は沈弱,このほか,尿量減少とともに浮腫(とくに下半身)が生じ,圧すると陥凹し元にもどりにくい。(陰水)はなはだしい時は,腹水を生じます。
【論治】
治法は温陽肋運で,益気健脾の基礎のうえに,附子・乾姜・肉桂・呉茱萸・高良姜などの,温裏麩寒薬を配合します。
【代表方剤】
●温中去寒剤…理中湯,附子理中湯。
水腫には、温陽利水で、
●温化水湿剤…実脾飲・真武湯などを用います。
B中気下陥
脚気虚・牌陽虚のためにr升精」機能が減弱したもので,横紋筋や平滑筋の緊張低下が顕著となって生じた症候です。
【主症状】
気虚・陽虚の症候以外に,手足がだるい・立ち暗.A・食べると眠くなる・下腹部の下墜感・慢性の下痢あるいは頑固な便秘。胃下垂・遊走腎・脱肛・子宮脱などをともなうことが多いです。
一般に,血圧,とくに最低血圧が低い。また胃拡張あるいは蠕動不足のために胃内に溜飲をともなうことが多いです。
【論治】
治法は健脾補中・升陽益気で,健脾益気を基礎に,柴胡・升麻・葛根などの升提薬を加えます。
【代表方剤】
●補気剤…補中益気湯。
,溜飲があれば、
●温化水湿剤…苓桂朮甘湯を加えます。