【大分類】補虚薬…正気を補う中薬です。
【中分類】補陰薬…陰液を補い、虚性の熱を制御する中薬です。
【学名】…Asparagus cochinchinensis Merrill(Liliaceae ユリ科)
【別名】…天冬・明天冬・天門
天門冬は日本薬局方(JP×IV)の第一追補に収載の生薬で、クサスギカズラ(草杉蔓)のコルク化した外層の大部分を除いた根を通例蒸したものでありますね!。
漢方処方用薬として鎮咳、利尿、滋養強壮作用を期待して滋陰降火湯、清肺湯などに配合されます。
【中国産地】…貴州省、四川省、広西省、雲南省、広西省、浙江省、湖北省
【日本産地】…本州、四国、九州、沖縄の海辺に自生
【その他産地】…朝鮮半島、台湾
天門冬は甘微苦・大寒で性質が肥かつ潤であり、清肺熱・滋腎陰・潤燥の効能をもちますよ!。
肺腎の陰虚有熱による労熱咳嗽・燥咳痰粘・喀血、熱病傷陰の舌乾口渇、あるいは腎虚内熱の消渇などに適します。
また、滑腸通便にも働くので、腸燥津枯の大便秘結にも用いますね!。
薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。
【温寒】…
大寒
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性、涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性、温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。
性質 | 作用 | 対象となる病証 |
---|---|---|
寒/涼 |
熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。 |
熱証。陽証。陰虚証。 |
熱/温 |
体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。 |
寒証。陰証。陽虚証。 |
平 |
熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。 |
すべての病証。 |
味 | 作用 | 対象となる病証 | 対象五臓 |
---|---|---|---|
辛(辛味) |
消散する/移動させる。体を温め、発散作用。 |
外証。風証。気滞証。血瘀証。 |
肺に作用。 |
酸(酸味)すっぱい。渋い。 |
縮小させる(収縮・固渋作用)。 |
虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。 |
肝に作用。 |
甘(甘味) |
補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。 |
陰虚。陽虚。気虚。 |
脾に作用。 |
鹹(塩味)塩辛い。 |
軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。 |
リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。 |
腎に作用。 |
苦(苦味) |
上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。 |
咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。 |
心に作用。 |
淡(淡味) |
利尿。 |
水湿証。 |
― |
【薬効】…清熱作用 潤燥作用 止瀉作用 鎮咳作用 去痰作用
【薬理作用】…インターフェロン誘起作用。
【用途】…鎮咳、利尿、緩和、滋養、強壮薬として、虚証の咳、かっ血、から咳などに用い、また大便燥結などにも応用する。
【学名】…Asparagus cochinchinensis Merrill(Liliaceae ユリ科)
【禁忌】…●脾虚の食少便溏には禁忌。
●咳嗽の初期から便用すると邪をとどめる恐れがあるので、注意が必要である。傷陰がなければ用いない。
【注意】…西暦280年頃までに書かれた中国の神農本草経には、天門冬(テンモンドウ)の名が記されていますが、天界の門の物語とか、門番から分けられた良薬であるとか、命名に関しての物語がありそうです。調べましたが、文献は見つかりません。
1587年に出版された本草綱目には「茎葉が茂る様子を満(マン)と表現、満の字を同発音の門に変える」の記載があり、「高地の谷に生える(抱朴子)」の他書記載、「年に複数回薬効部位(根)を採取、冬にも採取」の状況から、天門冬(テンモンドウ)(天門冬)の名になった模様です。別名は「クサスギカズラ」です。
「臭いが強い円と身構えてしまいそうですが、草類で、スギに似た棒状の葉を持ち、ツル状(カズラ・蔓)である事からの命名ですよ!。
●日本薬局方
【出典】…神農本草経br>
【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
上品(不老長生薬)
【基原(素材)】…ユリ科クサスギカズラ(草杉蔓)のコルク化した外層の大部分を除いた根です。
図01:天門冬の根から取り出します。
図02:天門冬の植物画像(葉は、杉の葉に似ています)
図03:天門冬の植物画像
図04:天門冬の根から取り出します。(中国産)
図05: 天門冬の植物画像
図06:天門冬の植物画像(果実写真)
本中薬(天門冬)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。
滋陰降火湯 »
清肺湯 »
生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。
中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。
従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。
天門冬(テンモンドウ)は、野菜に詳しい方が見れば「アスパラガス?」と思う外見、両種とも同じ仲間の植物です(キジカクシ科クサスギカズラ属)。秋は過ごしやすい季節、しかし調子を崩しがちな身体部位もあります。
それは肺。潤いを好む肺は、大気が乾く秋冬は調子を崩しがち。カゼでの咳・ノド痛ではなく、乾きから起こる「から咳・声枯れ・粘痰がからむ」の不快症状ですね!。
肺に潤いを与える天門冬(テンモンドウ)で機能回復を図ります(清肺湯、滋陰降火湯)。
肺は弱い臓鵬(矯臓)で回復に時間がかかるため、根気良く服薬してください(天門冬(テンモンドウ)使用の漢方エキス剤は少なく、同薬効のバクモンドウを用いた麦門冬湯を服用ください)。
「ノドの不調など放っておけ」となれば、それは体力低下に続く道ですよ!。
ひとはエネルギー補充と体循環を、2つの推進力「呼吸トラブルがない」「食事をおいしいと感じとる事が出来る」で行っています。一でも調子を崩せば、体力は急落します。
エアコンが普及し、乾燥空気にさらされる事が増えました。「から咳・声枯れ・粘痰の不調」も、年中起こる現代病となっています。
西暦280年頃までに書かれた中国の神農本草経には、天門冬(テンモンドウ)の名が記されていますが、天界の門の物語とか、門番から分けられた良薬であるとか、命名に関しての物語がありそうです。調べましたが、文献は見つかりません。
1587年に出版された本草綱目には「茎葉が茂る様子を満(マン)と表現、満の字を同発音の門に変える」の記載があり、「高地の谷に生える(抱朴子)」の他書記載、「年に複数回薬効部位(根)を採取、冬にも採取」の状況から、天門冬(テンモンドウ)(天門冬)の名になった模様です。別名は「クサスギカズラ」です。
「臭いが強い円と身構えてしまいそうですが、草類で、スギに似た棒状の葉を持ち、ツル状(カズラ・蔓)である事からの命名ですよ!。
1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
※神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。
2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。
3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書
李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
李時珍、生家にて »
4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
【薬用部分】…
サポニン
天門冬の植物画像