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生薬解説蓮肉れんにく

生薬解説 蓮肉

蓮肉 説明表示をクリック → 説明表示  いらっしゃいませ

中国における薬物の応用の歴史は非常に古く、独特の理論体系と応用形式をもつに至っており、現在では伝統的な使用薬物を「中薬」とよんでいます。

中薬では草根木皮といわれる植物薬が大多数を占めるところから、伝統的に薬物学のことを「本草学」と称しており、近年は「中薬学」と名づけています。

中薬学は、中薬の性味・帰経・効能・応用・炮製・基原などの知識と経験に関する一学科であり、中医学における治療の重要な手段のひとつとして不可分の構成部分をなしています。

【大分類】収渋薬…体内からもれ出るものを止める中薬です。

キャッチコピー強壮剤

【別名】…蓮子

 概要

強壮剤です。

古代ハス

昔の沼地のような地層から見つかったハスの果実には発芽能力のあるものがあり、これを増やした古代ハスが各地に植えられています。有名なのは千葉県の花見川下流の湿地帯でハスの研究者、大賀一郎博士が1951年(昭和26年)に見つけた大賀ハスです。

この場所で東京都が燃料にする草炭を採掘していましたが、1947年に作業員が丸木舟を見つけました。そこで調査を進めたところ、さらに2隻の丸木舟とハスの花托(果托)が出土しました。

このことを知った大賀博士がボランティアとともに発掘調査を続け、1951年の3月から4月にかけて地下6メートルの泥炭層から3粒の果実を発見しました。近くにあった丸木舟の木片の炭素14の存在量から木片の年代を測定し、これからの推定でハスの実は約2,000年前の弥生時代のものと考えられました。

大賀博士がこの3粒を栽培したところ、一粒が発芽し、一年余りで花を付けました。花は淡紅色で現代のものより花弁が細く、筋が目立たないという特徴があります。

今では大賀ハスの名で各地に植えられています。このハスについては直接種子の年代を測定していないので、上の地層から落ちてきた新しいものではないかとか、1年で花が咲くのは早すぎるとか疑問視をする意見もかなりありました。

しかし、ハスは育て方によっては1年程度で花を付けることもあるようですし、各地の地層から同様の種子が見つかり、花が咲くまで育っていることから、大賀ハスも本物と思います。

同様なものとして1971年に埼玉県行田市で焼却場建設現場から掘り出され2年後に花を付けた行田ハス、1977年に埼玉県越谷市で灌漉用のパイプラインの埋設工事中に見つかった越谷ハス、平泉中尊寺の800年前の秦衡の首桶から大賀博士が発見した中尊寺ハスなどがあります。

ハス(図2)

ハス Nelumbo nucifera Gaertn はハス科Nelumbonaceaeに属する大型の水生植物で、葉、花茎は水上に抽出します。葉は円形で径が30~50cmになり葉柄は葉の中央に盾状に付きます。地下に根茎があり、特に食用ハスでは大きく肥大します。花期は6~8月で、花は花茎の上に単生し、径は12~20cm、花被片は通常25~30枚、雄しべが弁化した八重咲きでは100枚以上あります。

外側の4~5枚は緑色で小さく薯片とされますが、花弁と明確に区別はできません。花弁は淡紅色が普通で、ときに白色です。雄しべは200~400本あります。長い花糸があり覇は黄色です。花の中央には如露の口の様な円錐形の大きな花托があり、独立した多数の雌しべが花托中に埋まっています(図3)。花は3~4日開閉をして散ります。

花後に雌しべが発達して果実になります。果実は円錐形の花托に半分埋まって、上部が飛び出しています(図4)。長さ15~20mm.巾10~15mmの球形または楕円状球形で、花図3ハスの花中央に多数の雌しべが埋没した大きな花托がある。

托とは癒合しておらず、熟せば花托から脱落し、後には蜂の巣状の穴のあいた花托が残ります(図5)。果実の果皮は堅く、暗褐色で、一見すると種子状です。果皮を除いた内側の種子に胚乳はなく、赤褐色の種皮の中は2枚の白色で肥厚した子葉よりなり、中央に若い葉を伴った緑色の胚が見られます(図6)。気孔は葉の上面にあります。

水中は酸素不足のため、葉柄、花茎、根茎にはこれを補うために口径の大きな管状の通気組織が多数見られます。食用にする根茎(レンコン)の断面には1O個前後の穴が見られますが、これが通気組織です。穴には直径の小さいものが2個ほどありますが、これがある方が根茎の上側になります。


 生薬生産地

中国地図 日本産無



 伝統的薬能

中国ではハスの色々な部分を生薬として使います。薬典には蓮子以外にも以下の5種の生薬が収載されています。

蓮子心(Lianzixin)Nelumbinis PIumula(図6)胚。成分、効能は蓮肉の中で説明済みです。

蓮房(Lianfang)Nelumbinis Receptaculum(図5)成熟した花托から果実を除いたもの。子宮出血尿血、痔の出血などの止血薬です。

蓮髪(Lianxu)Nelumbinis Stamen雄しべ。遺精帯下、頻尿の薬です。

荷葉(Heye)Nelumbinis Folium葉。清暑化湿涼血止血薬。暑さによる煩悶、乾き、下痢、吐血、便血子宮出血などに使 います。

繭節(Oujie)Nelumbinis Rhizomatis Nodus(図8)

蓮根の節の部分。吐血、喀血、傷からの出血、尿血子宮出血などの止血薬です。

【用語解説】

※1 脾泄 腹が張って下痢をし、食べれば戻すもの。

※2 赤白濁 小便が濁る病。

※3 崩中 子宮からの大量出血。

薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。

【温寒】… 平
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。

生薬中薬)の性質と関連する病証
性質作用対象となる病証

寒/涼

熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。

熱証陽証陰虚証。

熱/温

体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。

寒証陰証陽虚証。

熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。

すべての病証。

 【補瀉】…  【潤燥】…  【升降】… 降  【散収】… 収
【帰経】…脾・腎・心
帰経とは中薬が身体のどの部位(臓腑経絡)に作用するかを示すものです。

【薬味】…甘  まず脾に入ります。
※味とは中薬の味覚のことで「辛・酸・甘・鹸・苦・淡」の6種類に分かれます。この上位5つの味は五臓(内臓)とも関連があり、次のような性質があります。
生薬中薬)の味と関連する病証
 味作用対象となる病証対象五臓

辛(辛味)

消散する/移動させる。体を温め、発散作用。

外証。風証。気滞証。血瘀証。

肺に作用。

酸(酸味)すっぱい。渋い。

縮小させる(収縮・固渋作用)。

虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。

肝に作用。

甘(甘味)

補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。

陰虚。陽虚。気虚。

脾に作用。

鹹(塩味)塩辛い。

軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。

リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。

腎に作用。

苦(苦味)

上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。

咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。

心に作用。

淡(淡味)

利尿。

水湿証。

【薬効】…滋養作用  強壮作用  止瀉作用  鎮静作用  健脾作用  養心安神作用  益腎固精作用 

【薬理作用】…脾を健やかにして、下痢を止めます。心を養い精神を安定させます。腎を益して遺精や帯下を改善します。平滑筋弛緩作用

【用途】…鎮静、滋養強壮薬として下痢、遺精、失眠などの症に応用する。

【注意】…「神農本草経」補中を主り、神を養い、気力を益す。

「日華子」気を益し、渇を止め、心を助け、痢を止める。久しく服すれば身を軽くし、老に耐え、飢えず、年を延ばす。

「本草綱目」心腎を交え、腸、胃を厚くし、精気を固め、筋骨を強くし、虚損を補し、耳目を利し、寒湿を除き、脾泄※1、久痢、赤白濁※2、婦人の帯下、崩中※3、諸血病を止める。

【出典】…神農本草経


【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
上品(不老長生薬)


 生薬の画像

【基原(素材)】…スイレン科ハスの果実を蒸乾したもの。

図01:ハスの植物画像1


図02:ハスの植物画像2


図03:ハスの植物画像3


図04:ハスの果実写真






図09:ハスの胚(蓮子心)
白い子葉と緑色の胚(左)・胚(右)


図10:生薬→蓮肉(蓮子)


図11:生薬 藕節(蓮根の節の部分)


図12:ハスの植物画像



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 方剤リンク

本中薬(蓮肉)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。関連リンク


  関連処方啓脾湯 »
  関連処方清心蓮子飲 »


生薬 生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。


中薬・中成薬 中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。 従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。


 詳細

●ハス科の種類と分布

ハス科には2種の植物があります。1種はハス、もう1種はキバナハス(別名アメリカハス) N.lutea(Wilid.)Pers. です。ハスの花の色は基本的には淡紅色です。インド、中国、日本などの熱帯アジアから温帯アジア、さらにオーストラリア北部に分布しています。キバナハスはハスに似ていますが花が淡黄色です。合衆国の東部から南アメリカ北部に分布しています。

●花ハスと食用ハス

ハスは昔から観賞あるいは食用目的に栽培されてきました。花をめでるものを花ハス、根茎を食用にするものを食用ハスといい、肥大した食用にする根茎を蓮根といいます。

花ハスは品種改良の結果、背の高さ、花弁の数花色の濃さなどの違いにより多数の品種が出来ています。江戸時代には100品種以上の花ハスを紹介した本が出ています。

最近ではキバナハスとの交配による淡黄色の品種もあります。蓮根用のハスも中国産の品種をもとに色々な品種が出来ています。

●名前について

和名のハスは花托が蜂の巣に似ていることからハチスと言っていたものの短縮形です(図5)。中国では現在の植物名は蓮ですが、昔は花托を蓮根茎を繭、茎と葉を荷と書き、その他植物の部位により、色々な名前が付いていました。全体を芙蓉と言うこともありました。

蓮について李時珍は"蓮は連の意味で、花と果実(花托のこと)が相連なって(一緒に)出るからだ"と説明しています。学名の Nelumbo はハスのスリランカ名に由来し、nucifera 旋渦は堅果を生じるという意味です。キバナハスの lutea は黄色いという意味です。

●ハスは日本にも自生しているのか?

ハスは日本各地で観賞用や食用に栽培されています。普通は人が管理している沼や池で見られ、完全な野生状態のものを見かけません。また、過去に何回も中国からハスを導入しており、特に明治になってからは良質の蓮根を作るために株をかなり導入しています。

そのようなことから日本には自生が無く、生えているものはすべて中国からの導入品とする説があります。しかし、日本各地の完新世(沖積世)の地層からハスの遺体が発見されています。

完新世は最後の氷河期の終わった約一万二千年前から現代までを言います。縄文時代以降です。見つかった遺体の中には果実もあり、最初に書きましたように、これを発芽させた古代ハスが各地で育っています。

こういう点から考えると導入された色々な品種にまぎれて、どこにあるか分かりませんが、日本のハスの血を引いたものが今でも生育しているような気がします。なお、野生のハスが見つからないのは大型植物のハスが育つ手つかずの沼地がなくなったための様な気がします。

●ハスの一年

ハスは種子から、あるいは2~3節を付けた根茎から育てます。種子の場合は果皮に傷を付けて吸水しやすくして植えます。葉は根茎の節の部分から伸びてきます。初めは数枚の浮葉が出て、その後、立葉を出します。

立葉は後に出るものほど大型化し、栄養が良ければ葉とともに花茎も出します。8月末に出る葉は止め葉と言ってやや小型です。止め葉の出た後は花が咲かず、根茎が太ります。

●一人ぼっちになったハス科

ハスは、かってはスイレン、ジュンサイ、コウホネ、オニバス、南米産のオオニバスなどとともにスイレン科 Nymphaeaceae に属していました。いずれも水生植物で、例外もありますが、根茎があり、円い葉を付けることなどが似ています。特にハスとスイレンはスイレンを漢字で睡蓮と書くようにだれが見ても近縁な植物に見えます。

ところがその後ハスは独特の花托を持つことなどからハス科として独立させ、スイレン科の隣に置くような分類が行われるようになりました。科は違うけれど近縁という扱いです。

さらに最近のDNAに基づく分類では上記のハス科以外の植物はスイレン目の中で並んでいるのに対して、ハス科だけはやマモガシ目に移り、プラタナスやマカダミアなどと近縁ということになりました。

なお「日本薬局方外生薬規格」も「中華人民共和国薬典」もハスはスイレン科として扱われています。

●ハスの葉が水をはじく理由

葉の表面はクチンという透明なニスの様な物質で出来たクチクラ(キューティクル)や、蝋で覆われています。そのためにツバキの様なクチクラの厚い葉では雨が降っても、葉にはあまり水が付きません。ハスの葉も水滴を乗せると葉が濡れることがなく、コロコロと良く転がります。葉は全く濡れず、葉の擾水性はツバキの比ではありません。クチクラだけでこのようになるとは考えられません。これは葉の構造に秘密があります。ハスの葉の表面には数μm(1,000分の数mm)の突起が密に生えています。

電子顕微鏡で調べるとその突起もさらに数100分の1程度の細かなチューブ状の突起に被われています。この突起は水をはじきますので、水滴は中に入り込むことができません。、沢山の突起の上に乗っている感じです。そのために、葉との接触面積が小さく水滴がコロコロと転がります。この構造を真似た繊維、鏡、便器、家の外壁などがすでに実用化されています。

●仏教のハスは、本当はスイレン?

釈迦は生まれるとすぐにハスの花の中に立ち【天上天下唯我独尊】と言ったというように仏教にはハスが付き物です。仏像の台座から香典の袋まで、色々な所にハスが登場します。これは汚れた泥の中に生えながら清楚な花を開くハスを汚れた現世の中で悟りを開くことに結び付けたものです。

なお仏典にはいろいろな色のハスの花が登場することから、本当はハスではなくスイレンではないかと考えられています。青色の花もあることから、さらに絞り込んで熱帯スイレンであるという説もあります。

●ハスの利用

ハスの薬以外の利用法として、花を観賞地下茎を蓮根と称して食用にするほか、種子(ハスの実)はでんぶん質で煮ると栗や豆を思わせる食感になるので、中華食材として各種料理やスープなどの具にします。甘く煮て甘納豆状のお菓子にすることもできます。種子を食材として利用するときは中央にある緑色の胚は苦いので除去します。この胚は集めて茶にします。

東南アジアのマーケットに行くとハスのつぼみの付いた花茎を売っています。これも食用にするようです。葉も茶にするほか、料理の際に食材をこれで包んで、蒸したりします。そのために中華材料店には荷葉の名で干したハスの葉が売られています。

●ハスの糸

ハスの根茎や葉柄などを折ると細い糸が出てきます。これは水の通路である導管(導管状仮導管)を強化するために導管の内壁にらせん状に巻かれた糸です。

これで布を織ったり曼茶羅を作ったりするのは糸が極めて細いために大変な作業です。現在でも織物を作っている所がありますが、製品の販売価格はきわめて高価です。

●象鼻杯

ハスの葉柄には通気のために4本の通気管があります。そこで葉の中心にある葉柄の付け根の部分を楊枝の様なものでつついて穴をあけた後、葉に酒を注ぎ、葉柄の下端から吸うと、通気管を通って酒を飲むことが出来ます。飲んでいる姿が、ゾウが鼻を伸ばしているようなので、これを象鼻杯と言います。

日本でも蓮池のあるいくつかの公園で象鼻杯を経験する催しが行われています。飲む人が代わると葉柄の下端を少し切り詰めますので、誰かがくわえた葉柄をしゃぶる訳ではありません。

●薬としてのハス(図7)

蓮肉(レンニク)Nelumbis Semen(日本薬局方外生薬規格)(局外生規)

蓮子(Lianzi)Nelumbinis Semen(中華人民共和国薬典)(薬典)

このほか薬典にはハス由来の生薬が5種類載っています。


生薬陳列

 生薬の書物の歴史

1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
神農本草経

神農神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。



2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。 本草経集注(しっちゅう)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)

陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。



3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
本草項目
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書

李時珍 李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
関連処方李時珍、生家にて »



4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
中医臨床のための中薬学


区切り
ハル薬局

【薬用部分】…果実

道教・八卦 人参

ハスの植物郡画像

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