【大分類】補虚薬…正気を補う中薬です。
【中分類】補陰薬…陰液を補い、虚性の熱を制御する中薬です。
【学名】…LILII BULBUS
【別名】…オノユリ・ハカタユリ
百合病(一種の精神病)に効きます。
山間の林道で大輪の百合の群生に出会うことがあります。
一説には少しの風にも揺れ動くことから、その名がついたとされる「ユリ」。
たくさんの鱗片が重なる鱗茎の形から「百合」の字が当てられたともいわれます。
美人を癒えた表現に、「立てば菖薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花」の句がよく知られますが、生薬となるビャクゴウの基原植物の1つであるオニユリの花は、赤鬼の顔に似た黒色の斑点模様のある赤榿色の花をつけ、個性的な美しさを放っています。
ユリ根は滋養強壮に優れ、古くから食用や薬用として利用されてきました。
中国原産といわれるオニユリは、日本に渡来して以降日本中に広がり、今では各地の人里に近い野山や田畑の縁などに自生しているのが見られます。
【中国産地】…【産地】
植物は中国原産で、このうち鬼百合は日本でも広く栽培または野生化しています。生薬の産地は以下の通りすべて中国です。
①河北省、河南省、山東省、江蘇省、安徽省、漸江省、江西省、湖北省、湖南省。
②河北省、河南省、安徽省、漸江省、江西省、湖北省、湖南省、陳西省。
④遼寧省、吉林省、黒竜江省、河北省、山東省、河南省、山西省、内蒙古自治区、陳西省。
【基原】
①オニ百合 L. lancifolium Thunb. (中国名:巻丹)、
②ハカタ百合 L.brownii F.E. Brown var. coichesteri Wilson (=rL. brownii FE. Brown var. viridulum Baker)(中国名:百合)、
③L.brownii F.E. Brown(中国名:野百合)、
④イトハ百合Liliaceae.DC.(中国名:山丹)(百合科Liliaceae)の鱗茎を通常蒸したものです。日局は①~④を基原とし、薬典は①、②、④を基原としています。
薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。
【温寒】…
平
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性、涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性、温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。
性質 | 作用 | 対象となる病証 |
---|---|---|
寒/涼 |
熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。 |
熱証。陽証。陰虚証。 |
熱/温 |
体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。 |
寒証。陰証。陽虚証。 |
平 |
熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。 |
すべての病証。 |
味 | 作用 | 対象となる病証 | 対象五臓 |
---|---|---|---|
辛(辛味) |
消散する/移動させる。体を温め、発散作用。 |
外証。風証。気滞証。血瘀証。 |
肺に作用。 |
酸(酸味)すっぱい。渋い。 |
縮小させる(収縮・固渋作用)。 |
虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。 |
肝に作用。 |
甘(甘味) |
補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。 |
陰虚。陽虚。気虚。 |
脾に作用。 |
鹹(塩味)塩辛い。 |
軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。 |
リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。 |
腎に作用。 |
苦(苦味) |
上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。 |
咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。 |
心に作用。 |
淡(淡味) |
利尿。 |
水湿証。 |
― |
【薬効】…鎮咳作用 平喘作用 強壮作用
【薬理作用】…●薬としての百合(図9)
百合(ビャクゴウ)UmBulbus(日本薬局方)(日局)
百合(Baihe)LiliiBulbus(中華人民共和国薬典)(薬典)
【薬理】
●鎮咳作用:煎液はマウスのの排出運動を盛んにしました。水エキスRは経口で気管のフェノールレッドの排出量を増加しました。
●鎮静作用:水エキスは内服でマウスのヘキソバルビタールによる睡眠時間を延長しました。
●免疫調節作用:百合多糖は経口でシクロホスファミド誘導による免疫機能低下マウスのマクロファージの呑食能を高め、リンパ細胞の転化を促進しました。エキスは内服でマウスのジニトロクロルベンゼンによる遅延型アレルギー反応を抑制しました。
●抗酸化作用:メタノールエキスはマウスの大脳のホモジネートでモノアミン酸化酵素-B(MAO-B)の活性を抑制しました。
メタノールエキスは in vitro でヒドロキシフリーラジカルを除去しました。
多糖は過酸化水素によるヒト赤血球の酸化溶血を抑制しました。
マウスのD-ガラクトースによる老化モデルに対し、多糖類の経口投与は血中のSOD、カタラーゼ、グルタチオンパーオキシダーゼの活性を高め、血漿および脳、肝臓のホモジネート中の過酸化脂質の量を低下させました。
【漢方における薬性と適用】
甘・微苦、微寒で水剤として作用します。陰を養い、清心安神の効があり、去痰、鎮咳熱病後期の余熱不眠、精神の異常、腫れ物などに応用します。
【用途】…消炎、鎮咳、利尿、鎮静薬として応用。
【学名】…LILII BULBUS
【出典】…神農本草経
【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
中品(保健薬)
【基原(素材)】…ユリ科ササユリまたは同属植物の鱗茎。
図01:オニユリの植物画像
図02:図4 オニユリの植物画像
図03:図5 コオニユリの植物画像
図04:図6 テッポウユリの植物画像
図05:図7 キカノコユリの植物画像
図06:図8 タカサゴユリの植物画像
図07:図9 生薬 百合
本中薬(百合)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。
辛夷清肺湯 »
生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。
中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。
従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。
●百合
百合はヤマ百合、オニ百合、ヒメ百合などの百合科 Liliaceae、百合属 Lilium の植物の総称名です。単に百合という植物は存在しません。なお、百合属に近縁のクロ百合属 Fritillaria にクロ百合、アミガサ百合など、ウバ百合属 Cardiocrinum にウバ百合があります。
これらの植物の花は確かに百合に似ています。さらに、同じ百合科ながら、百合とはかなり遠縁の植物にチゴ百合(チゴ百合属 Disporum )やナルコ百合(ナルコ百合属 Polygonatum )があります。
チゴ百合の花は小さいながら百合に似ていて稚児百合の名前が納得できますが、ナルコ百合の花は全く百合とは似ていません。こちらは茎と葉の姿が百合に似ていることから名付けられたようです。
百合はすべて草本で、地下には多肉の鱗片からなる鱗茎(いわゆる球根)があります。葉の形はササの葉状です。花は大型で横向き、下向き、まれに上向きに咲き、ロート形です。6枚のほぼ同形同大の花被があり、外側に3枚、内側に3枚配列し、先は多少とも反り返って開いていています。
雄しべは6本、雌しべは1本で、子房は3枚の心皮で出来ています。このように花葉(花を構成する花被片、雄しべ、心皮など)の数が3の倍数というのが百合を始めとする単子葉植物の基本的な構造です。
なお、百合の雄しべでは蒋(花粉の入った袋)の中央が柄(花糸)の先に丁字形に付いていて、風が吹くと小さく揺れます。これが近縁のクロ百合属(蔚の端が花糸に付き、マッチの軸状)との違いです。なお、百合の花粉は赤褐色で衣服に付くと色が落ちません。そのために切り花に使う百合ではしばしば繭を取り除いてあります。
●引っ張る根と吸収する根
百合の鱗茎を植えると地上に茎を伸ばし葉と花を付けますが、地下には2種類の根が生じます(図2)。鱗茎の下から出る根は多数の横綴があり、縮むことによって鱗茎を土の中に引っ張り込む働きをする牽引根です。そのために若い株の鱗茎が地表近くにあっても、何年もかけて鱗茎は地中深くに移動します。
一方、鱗茎から地上に向けて伸びた茎に付く根は普通の根で、水分や養分を吸収する吸収根です。鱗茎を浅く植えると百合は吸収根を伸ばせず、うまく育ちません。
●日本の百合の仲間
百合は約70種が北半球に生育していますが、日本を含むアジアの温帯に多く、日本には12種、中国には39種の百合が自生しています(図3)。
日本の12種はいずれもそのまま観賞植物になるような美しいものばかりです。東京付近で最も一般的な百合ははじめに書きましたヤマ百合 L.auratum Lindl. (図1)です。東北地方から近畿以北の丘陵や山地の明るい林下や林縁草の生えた斜面などに生える日本固有の百合です。高さは1~1.5m前後で、茎は明るい方に向かって少し傾いています。
7~8月に大型の花を茎の上部に数個から20個前後付けます。6枚の花被片は長さが10~18cmあり、先がとがった披針形で先は反り返り、色は白く、内面中央に縦に黄色い着色と多数の赤褐色の斑点があります。
雄しべの蔚は赤褐色で花糸に丁字型に付き、ちょっとした風でもゆらゆらとよく動きます。花には芳香があり、一輪を室内に飾るだけで、匂いに敏感な人は頭が痛くなるほど強く香ります。
伊豆七島には背丈も花もヤマ百合を大きくしたようなサク百合 L.aurtum Lindl.var.platyphyllum Baker が見られます。花はヤマ百合より赤褐色の斑点が少ないです。本州中部から九州にはヤマ百合にとって代わるように山地や人里近くの林にササ百合 L. japonicum Houtt. が生えています。
茎の高さは0.5~1mほどで、花はヤマ百合よりやや小型で、ヤマ百合が大きく開くのに対してやや筒形です。花被片は淡い赤紫色をしており、優雅な百合です。東北地方(山形、新潟、福島の県境)の山地の草原にはササ百合を小型にしたようなヒメサ百合 L. rubellum Baker が見られます。
日本特産種で茎の高さは0.3~0.8m位、花は淡紅色で香りがあり、名前と同様に何とも可憐な百合です。田の畔など人里近くに多い百合にオニ百合 L. lancifolium Thunb. (図4)があります。茎は高さ1~2mになり、暗紫色の斑点が多く、若い時は白い毛が生えています。
花は茎の上部に数輪から20輪ほどを付けます。花被片は長さが7~10cm、榿赤色で濃色の斑点があり、強く反り返ります。葉腋には多数の紫褐色のむかごを付けます。むかごは小さな鱗茎で、地上に落ちるとよく苗を生じます。
その一方で果実が稔りません。三倍体のためです。北海道から九州に見られ、中国や朝鮮半島にも分布しています。人里近くに多いことから日本のものは真の自生ではなく、古い時代に中国から渡来したものではないかと考えられています。
コオニ百合 L.leichtlinii Hook.f(Carri6re) H.Hara et Kitam. (図5)はオニ百合に似てやや小型で山地の草原に生えます。茎が緑色で斑点がないこと、むかごが出来ないこと、飼旬枝を出すことなどで、オニ百合と区別が出来ます。
日本全土と中国、朝鮮半島シベリアに分布します。鹿児島の島襖、沖縄の海岸近くの崖に生えるテッポウ百合 L. longiforum Thunb. (図6)は純白のラッパ型の花を付け、香もあるので切り花用に栽培され、欧米ではイースターリリー EasterLily の名で復活祭に用いられ、かつては日本から鱗茎が大量に輸出されました。
カノコ百合 L. speciosum Thunb. は九州の西海岸の崖などに生え、花被片は強く反り返り、色は中心が淡紅色で外に向かうに従って白になり、濃紅色の斑点が多数あります。
非常に美麗な百合で観賞用にも栽培されます。このほか、海岸にはスカシ百合 L.maculatum Thunb. 山地にはヒメ百合五.ooηooわrSalisb.、亜高山にはクルマ百合 L. medeoloides A.Grey が見られ、さらに産地限定で数種の百合が見られます。
これらの日本の百合は欧米で百合の品種改良の親として使われました。たとえば大輪の純白の花を付けることで人気の百合、カサブランカは花の形からも分かるようにヤマ百合の血を引いています。
●三枝祭り
百合にまつわる神事として奈良の率川神社の三枝祭、別名ゆり祭りが有名です。祭神の姫神様が、百合が咲き誇る三輪山の麓に住んでいたことから、姫神様に喜んで頂くために、毎年6月17日に酒樽にササ百合の花を飾って神前に供え、ササ百合を持った4人の巫女による舞いが奉じられます。この祭りは大宝律令(701年)に既に国の祭りとして行うことが定められていたそうです。
しかしその頃から連綿として現代まで行われてきた祭りではなく、現在の祭りは明治になって復興したものです。
●ひ弱な百合と踏んでも蹴っても死なない百合
野生の百合には栽培の困難なものと容易なものがあります。栽培の困難な百合の代表はヤマ百合です。あれほど野外では元気に育っているのに庭に植えると病気やカビに弱く、また野ネズミなどに食害されて、まともに育ってくれません。埼玉県の国営武蔵丘陵森林公園はヤマ百合が10、000株植えられ、名物になっていますが、花壇ではなく林下に自然状態で植えられています。
一方、中国産のキカノコ百合 Lilium henryi Baker (図7)は栽培家が踏んでも蹴っても枯れないと言うほど丈夫です。かつて私の研究室で成分を分析したところ抗菌性のある極めて苦い物質が大量に取れました。これでは野ネズミも微生物も逃げ出しそうです。オニ百合もその丈夫さはキカノコ百合並みで、植えっぱなしでも毎年花を咲かせてくれます。
また葉腋に付くむかごが落ちて、翌年には親株の周辺に沢山の苗が生えてきます。ヒメ百合、ヒメサ百合、カノコ百合など、やさしい名前の多い百合の中で、オニ百合とは強烈な名前ですが、それはこの丈夫さとともに濃い斑点のある赤榿色の花、毛深い茎などのイメージによるものと思います。
●タネから1年で花の咲く百合
百合は多年草で、種子が発芽するとまず小さな植物体が出来、光合成により1年かけて小さな鱗茎を作ります。この鱗茎が花を付けるほど大きくなるのには5~6年かかります。
ところが種子から1年で花を付ける百合があります。高速道路の法面や都市の周辺の草地、人家の回りに見られるシンテッポウ百合 L. x formolongo です。夏、細いラッパ型の白花を付けます。これは台湾産のタカサゴ百合 L. formosanum A. Wallace (図8)とテッポウ百合の雑種です。タカサゴ百合は花被片の外側に淡紫褐色の着色がありますが、シンテッポウ百合にはこれがあるものとないものがあります。
葉もタカサゴ百合のように細いものからテッポウ百合のような幅広いものまであります。変異の巾が広くて両親のどちらかに近いものもありますが、都市周辺の空き地に生えているのはシンテッポウ百合とみなしてよいようです。
●食用の百合
百合の鱗茎は百合根の名前で食用にされます。しかし全ての百合が食べられるわけではありません。苦すぎてとても食用にできないものもあります。
一般に食用にされるのはオニ百合、コオニ百合、ヤマ百合などです。百合根用に栽培される食用百合はコオニ百合、あるいはコオニ百合とオニ百合の雑種です。主な産地は北海道で、全国の95%を栽培しています。百合の鱗片は茄でて食べるとほくほくした舌触りとほんのりとした甘さと適度な苦味があり、茶碗蒸しなどに利用します。
●多彩な成分を含む百合の鱗茎
私の所属していた研究室が百合鱗茎の成分研究を開始したのは1985年頃でした。当時は百合の鱗茎の成分として粘液と澱粉くらいしか報告されておらず、たいした成分が取れないのではないかという不安がありましたが、研究をしてみると次々と新成分が見つかりました。
最初に得たものは強い苦味のあるグリセリンに糖とフェニルプロパノイドが結合した化合物で、分離したのが中国原産のホソバハカタ百合ムre蜘εE.H.Wilsonの鱗茎でしたので、この一連の化合物をregalosideと命名しました。病害に強い百合の鱗茎に多く含まれる傾向があり、前述のキカノコ百合には極めて大量に含まれていました。
このほか、入手可能の原種の百合について全て研究をして薦糖にフェニルプロパノイドが結合した一連の化合物白血病細胞に毒性を示すという報告のある含窒素化合物jatrohamとその誘導体を得ました。
厚生省の日本薬局方外生薬規格の「百合」の項に収載されている確認試験はフェニルプロパノイドの性質を利用して当研究室で開発したものです。
その後、北アメリカ産の百合 L. paradarinum Kellogg. の鱗茎から26位の水酸基にアセチル基が結合した特異なフロスタノール型サポニンが各種得られたことを出発点にして、それまでほとんど手付かずの状態であった百合科のステロイドサポニンの研究に移り、優れた教室員と院生に恵まれて、多数の新規のサポニンを分離して、化学構造を決め、生理活性を調べてきました。腫瘍細胞に強い活性を示し、アメリカ化学会で講演をして話題になったサポニンもありました。
1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
※神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。
2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。
3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書
李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
李時珍、生家にて »
4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
【薬用部分】…
【古典の記載】
●「神農本草経」邪気、腹脹、心痛を主り、大小便を利し、中を補い気を益す。
●「名医別録」浮腫、臚脹(ろちょう)※1 、瘤満寒熱通身の疼痛および乳難、喉癖を除き、涕泪(ていし)※2 を止める。「本草街義」傷寒壊後の百合病(びゃくごうびょう)※3 を治す。
【処方例】
辛夷清肺湯、百合知母湯、百合地黄湯。
【用語解説】
※1 臚脹(ろちょう)…腹が膨満する病気
※2 涕泪(ていし)…鼻水と涙
※3 百合病(びゃくごうびょう)…精神の病、きつねつき
【性状】
頂端の細まった長楕円形、披針形、または長三角形で、中がくぼんだ舟形を呈し、半透明で長さは1.3~6.Ocm、幅は0.5~2.Ocmあります。外面は乳白色~淡黄褐色、ときに紫色を帯び、ほぼ平滑です。
中央部はやや厚く、周辺部は薄くてわずかに波状となり、ときに内巻に曲がっています。
通常、数条の縦に並行な維管束が透けて見えます。質は堅く、折りやすく、折面は光沢があり、なめらかです。
においはなく、わずかに酸味と苦味があります。
【成分】
●グリセロール配糖体:1-0ρcoumaroylglyc-erol、regaloside類など。
●シュークロース誘導体:3、6-σdiferuloylsucroseなど。
●スピロスタン型ステロイドサポニン:brownioside、26-0-β-D-glucopyranosylnuatigenin-3-0-α-L-rhamnopyranosyl-(1→2)-β-D-glucopyranosideなど。
●ステロイドアルカロイドとその配糖体:β1-solamargineなど。その他:jatrohamなど。
百合の植物画像