【大分類】清熱剤…熱を除去する中薬です。
【中分類】清熱燥湿薬…乾燥しながら熱を除去する中薬です。
【学名】…Coptidis Rhizoma
キクバオウレン Coptis japonica Makino var.japonica は本州日本海側に分布し、山林の林床に自生する多年草です。
根出葉が一回三出複葉なことで、二回三出複葉のセリバオウレン var.dissecla 、三回三出複葉のコセリバオウレン var.major と区別されます。
根茎は横に這い、多数の根をつけます。早春に白色の花が各茎に普通3個ずつ咲きます。若い個体は雄性花をつけるが、成長すると両性花をつけますよ!。
根を除いた根茎を乾燥し、生薬としますね!。
【中国産地】…四川省
【日本産地】…新潟、福井、鳥取、山梨、兵庫
●呉茱萸(ゴシュユ)および白芍薬(シャクヤク)と配合して腹痛や消化不良、赤痢、胃の不鯛に使用します。
●肉桂(シナモンの皮)と配合して不眠を引き起こす心と腎の不調和に使用しますよ!。
熱、火、火毒、湿熱を取り除きます!。
●心の火を鎮めます。
●胃火を排出します。
薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経・有毒と無毒・配合・禁忌)の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」です。
【温寒】…
寒
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性、涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性、温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。
性質 | 作用 | 対象となる病証 |
---|---|---|
寒/涼 |
熱を下げる。火邪を取り除く。毒素を取り除く。 |
熱証。陽証。陰虚証。 |
熱/温 |
体内を温める。寒邪を追い出す。陽を強める。 |
寒証。陰証。陽虚証。 |
平 |
熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。 |
すべての病証。 |
味 | 作用 | 対象となる病証 | 対象五臓 |
---|---|---|---|
辛(辛味) |
消散する/移動させる。体を温め、発散作用。 |
外証。風証。気滞証。血瘀証。 |
肺に作用。 |
酸(酸味)すっぱい。渋い。 |
縮小させる(収縮・固渋作用)。 |
虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。 |
肝に作用。 |
甘(甘味) |
補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。 |
陰虚。陽虚。気虚。 |
脾に作用。 |
鹹(塩味)塩辛い。 |
軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。 |
リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。 |
腎に作用。 |
苦(苦味) |
上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。 |
咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。 |
心に作用。 |
淡(淡味) |
利尿。 |
水湿証。 |
― |
【薬効】…解熱作用
消炎作用
健胃作用
【薬理作用】…トリコモーナスに対する抗生作用が知られています。
動物実験で、降圧作用が認められました。
黄連の50%エタノールエキスは、グラム陽性菌-陰性菌のある種のものに対して低濃度で制菌作用がある。
また黄色ブドウ球菌増殖阻止作用があるが、大腸菌に対しては無効 である。一方含有成分の berberineの抗菌作用は腸内細菌群に対しサルファ剤とを同程度の増殖阻止作用が認められた。また、黄連エキス及びberberine は、摘出小腸に対し鎮攣作用、摘出腸管・子宮に対し緊張作用、胆汁及び膵液分泌促進作用、動脈硬化に対する予防効果、抗炎症作用などが認められている。
【用途】…消炎苦味健胃鎮静薬として、充血または炎症があって、心中煩し、悸し、精神不安、心下部の痞え、吐下、腹痛、出血などの症状をあらわすものに応用する。
【学名】…Coptidis Rhizoma
【禁忌】…下痢、陰虚、胃寒虚の方は使用を避けること。
長期的に使用すると脾や胃を損傷する可能性がありますよ!。
【注意】…下痢、陰虚、胃寒虚の方は使用を避けること。
長期的に使用すると脾や胃を損傷する可能性がありますよ!。
●日本薬局方
【出典】…神農本草経
【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
上品(不老長生薬)
【基原(素材)】…キンポウゲ科オウレンまたは近縁植物の根茎の髭根を除いた根茎を乾燥したもの。
図01:黄連の植物写真
図02:黄連の生薬写真
図03:黄連の植物写真2
図04:黄連の植物写真3
本中薬(黄連)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。
温清飲 »
黄連解毒湯 »
黄連湯 »
荊芥連翹湯 »
柴胡清肝湯 »
三黄瀉心湯 »
清上防風湯 »
竹筎温胆湯 »
女神散 »
半夏瀉心湯 »
生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。
生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。
中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。
従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。
黄連は寒の性質を持つ苦い生薬で、少なくとも2000年前から熱や湿を取り除くのに利用されてきましたよ!。
神農はこれを王連(百合の王)と呼んで上品の生薬の一つとし、常用することで記憶力がよくなると示唆しています。
中国名は黄色いつながりという意味で、冷やす性質を持つ黄色の重要な生薬の一つです。
色は黄色いですよ!。
1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
※神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。
2.【本草経集注】(西暦500年頃)
斉代の500年頃に著された陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。
松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏)
陶弘景(456~536年)は、中国南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。江蘇省句容県の人です。茅山という山中に隠棲し、陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。
そのために山中宰相と呼ばれました。庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。
風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。
3.【本草項目】(西暦1578年)
30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された李時珍(りじちん)の『本草項目』です。掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。
『本草綱目』は、1590年代に金陵(南京)で出版され、その後も版を重ねました。わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。
本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。
儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書
李時珍(1518~1593年)は、中国明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。
湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年<万暦6年>『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。
李時珍、生家にて »
4.【中医臨床のための中薬学】(西暦1992年)
現在、私が使用している本草の辞典です。生薬の記載個数は、約2,700種に増えました。
神戸中医学研究会の編著です。
【薬用部分】…
ベルベリンberberjne, palmatine, coptisine
【中国での一般的服用量】…1-5g
熱帯アジア原産の大形の多年草で、地下にショウガ様の肥厚した黄色い根茎を有し、高さ1~1.5mです。葉は長楕円形で緑色を呈し、両面とも毛がなく、4~7枚が2列に互生します。
生薬一覧黄連の地上植物写真