エゾウコギ(えぞうこぎ)

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エゾウコギ;薬用人参と同様に強壮強精作用を持つといわれるウコギ科の植物です。日本では北海道東部に自生しています。学名はlAcanthopanaxsenticosus又はEleuterococussenticosusです。生育地はシベリアのアムール河中流地域と樺太、中国の黒龍江省、吉林省、遼寧省、日本では先述のごとく、北海道の北見、帯広など東部に分布します。成長すると4〜5メートルの高さにまでなるウコギ科のウコギ属に属する落葉灌木です。その代表的なものが薬用人参〔ニンジン属トチバニンジン(生薬名:竹節人参)、オタネニンジン(生薬名:朝鮮人参)〕です。エゾウコギという名は日本名で、ロシアではエレウテロコック、中国名は刺五加、刺のある五加(ウコギ)という意味です。鋭い刺があるのが特色です。アイヌの人達は、神聖な植物として珍重してきました。枝を入口につるし、悪霊を遠ざけるまじないのように使ったそうです。薬効については、強精、強壮以外にも神経痛や関節表、淋病の治療に使ったという記録があります。
中国の刺五加やロシアのエレウテロコツクの製品はエゾウコギの根皮を原料とし、そのエキスを抽出し、加工したものです。しかし、根を利用することは資源が枯渇しますから、北海道では一般に茎を使うようになっているのが現状です。根を使わないのは邪道との意見もありますが、根と茎の成分を比較すると含有量こそ違いますが、同じ成分が含まれていることより、問題は無いとされています。エゾウフギは生命力の強い植物ですが、栽培するのは容易ではなく、原料は中国やロシアに自生しているものを使うことが多いようです。ロシアや中国でも資源保護と有効利用の意味で茎を使うようになってきました。近年、根に含まれない、活性を有する化合物が葉に存在することから、用途によっては根より葉の方が効果があるとされています。
日本では、エゾウコギは厚生省薬務局長通達に明記されています。これによりますと、医薬的な効果効能を標榜したり、形状あるいは用法用量が医薬的であったりしない限りは薬事法の規制対象外であることを意味します。即ち「OOに効く」「OOが治る」とか、1日に3回食後に飲むという薬と間違いやすそうな表記や形状でなければ一般の食品と見なすということです。尚、中国では国が認めた薬として、中国の薬局方にあたる「中華人民共和国薬典」に刺五加とその製剤の刺五加エキスが収載され、不眠、鎮静、気の減退、食欲不振、足腰の痛みの鎮痛、精力減退、老衰による体力減退などの滋養強壮剤に用いられると記されています。従って病院でも処方され、含有率の高い薬液や注射液などが使われています。それらの心血管の疾病、神経衰弱症に対する効果は定評があるといわれます。従来、抗疲労や持久力増強効果があることから、スポーツ選手を中心に愛用されてきました。長野オリンピックでは有名選手達が、また日本人の宇宙飛行士もエゾウコギを愛用していたそうです。しかし、その免疫力増強作用が注目を集め、幅広い研究が行われた結果、その使用目的も多岐にわたっています。
現在中国とロシアが世界的にその販路競争をしていますが、薬用人参の市場にも食い込んでいます。成分的に薬用人参とは全く異なるところに注意して下さい。世界的にみると、ニンジン60%、エゾウコギ(エレウテロコツク、刺五加)40%くらいのシェアを占めるといわれます。

エゾウコギの特徴的成分とその作用
成分 主な作用
エレウテロサイドB
(シリンジン)
エレウテロサイドE
抗疲労、抗ストレス、性腺刺激、学習再現(向上)、持久力・スタミナ・集中力、抗アレルギー、抗リューマチ
エレウテロサイドB1
インフラキシジン
鎮静、不眠症、健忘症、性腺刺激、血圧降下、自律神経調整
セサミン
クロロゲン酸
ジカフェオイルキナ酸
過酸化脂質生成の抑制〔老化・成人病などの予防、(ビタミンE以上)〕
抗アレルギー
糖尿病態時の糖代謝改善、糖尿病性合併症(末梢神経障害、網膜症、腎症、白内症など)の予防

○エゾウコギの成分
エゾウコギは数多くの成分を含んでいます。図に示すのは主成分の構造式です。表1には特徴的な成分とその作用を示します。成分の特徴としては、エレウテロサイドEが主成分として多く入っています。エゾウコギにはガンや老化などの原因となる過酸化脂質の生成を抑制する成分が含まれています。その1つがクロロゲン酸やジカフェオイルキナ酸と呼ばれるタンニンの仲間です。タンニンについては過酸化脂質の抑制作用、抗ガン作用などがいわれています。クロロゲン酸はコーヒーなどに含まれる植物界に広く存在する成分です。血清トリグリセライド、過酸化脂質、GOT、GPTなどの上昇を抑制する(肝機能改善)作用、脂質代謝改善、胃液分泌促進作用がある強力な抗酸化成分です。尚、ジカフェオイルキナ酸はこのクロロゲン酸やビタミンEよりも強い過酸化脂質抑制作用を持つといわれています。
エレウテロサイドEはストレスによる性行動の低下防止や記憶力の回復を高める働きがあるリグナン化合物です。その他、降圧作用があるピノレジノール・ジグリコサイド等のリグナン化合物が含まれます。リグナン系化合物には抗腫瘍、抗アレルギー、抗菌活性など多くの生理活性が知られています。
インフラキシジンとエレウテロサイドBはクマリン系化合物です。これらの化合物には、血管拡張作用や抗けいれん作用が知られています。インフラキシジンには鎮静作用があることが報告されています。同化合物はエゾウコギの品質をチェックする指標となる重要な成分でもあります。フェノール配糖体であるエレウテロサイドB(シリンジン)には、ストレスを低下させる作用、疲労回復、性行動減退防止作用があります。

■エゾウコギ主要成分の構造式


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