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概 要

胃がキリキリ痛む場合のファースト・チョイスです。
×口や咽(のど)の渇き、胃のつかえがある時は合わない場合が多いです。

こんな方に

冷たいものの飲み過ぎ、食べ過ぎによる胃痛の方

主 治

脾陽型の胃痛(慢性潰瘍など)/裏寒の疼痛/胃寒(寒痛)証(胃に寒邪が侵入)

適応症

神経性胃炎、慢性胃炎胃酸過多症胃アトニー胃・十二指腸潰瘍、胃腸病、胃炎胃潰瘍による胃痛、神経性の胃痛胃下垂幽門狭窄悪阻(つわり)、月経痛、低酸症

妊娠・授乳の注意

女性

●妊婦または妊娠の可能性のある人は、使用できない場合があります。

診断のポイント

●胃弱、冷え症
心下痞と圧痛
●胃痛(空腹時)
●甘いものを好む

弁証論治

●食滞胃脱(胃中停食) »
●脾陽虚(脾陽不振・脾陽虚弱・脾胃虚寒) »
●胃寒 »

出典書籍

出典書籍 (source)
西暦1107年 宋時代 『和剤局方』 陳思文 太平恵民和剤局方(たいへいけいみんわざいきょくほう)ともいう。宋・太医川編。1078~1085年に刊行。宋代の薬局法ともいうべき書で、ちなみに日本の薬局方の名はこの書より起ったものである。現存するものは10巻で諸風、傷寒など14門、788方に分類される。処方毎に主治、配伍、修制法などが記されており、広く流布し、影響の比較的大きい書である。→処方使用期間:900年間


処方別・製品一覧

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証の判定

判定

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中医学の証・解説

次の症状のいくつかある方は、本方剤が良く効く可能性が大きいです。

安中散加茯苓 朱雀:四神の獣・南方の守護神

八 法

温法:温裏・散寒・回陽・通絡などの効能により、寒邪を除き陽気を回復し経絡を通じて、裏寒を解消する治法です。

【中薬大分類】温裏(補陽)剤…体内を温める方剤です。即ち、裏寒を改善する方剤です。

【中薬中分類】温中散寒剤…中焦の冷え(裏寒)に用いる方剤です。中焦脾胃の陽気が虚衰して、運化と昇陽が不足し、腹痛・腹満・食欲不振・口渇がない・下痢・悪心・嘔吐・舌苔が白滑・脈が沈細または沈遅の症候がみられます。

八綱分類

裏寒虚(りかんきょ) 裏 寒 寒 虚 …証(体質・症状)が、裏証(慢性症状)、寒証(胃寒・冷え)、虚証(虚弱)、湿証(水分停滞)の方に適応します。


【気血津・臓腑証】
胃寒の疼痛(いかんのとうつう)…空腹時の軽度の疼痛・上腹部膨満感・呑み酸を目標として使用します。やや温める傾向の鎮痛剤です。

寒凝気滞(かんぎょうきたい)…寒冷刺激による気滞に用います。温性の理気薬を主体とした理気剤です。

【証(病機)】胃寒実(いかんじつ)

中医学効能(治法)

温中散寒理気止痛止嘔制酸

用語の説明(term)

温中(おんちゅう)…中焦=脾胃を温めることです。

温中散寒法(おんちゅうさんかんほう)…温・熱性の生薬を用いて脾胃を温め、腹痛や冷え下痢などを治療する方法です。類語:温裏散寒法(おんりさんかんほう)

理気(りき)…理気:気の流れを良くすることです。気(氣)を正常に巡らせ機能を回復する治療法です。

止痛(しつう)…痛みを止めることです。

胃寒(寒痛)(いかんかんつう)…上腹部(胃部)の冷感と惨痛を主とするもので胃の陽気の障害によって生じます。胃の平滑筋の痙攣(ケイレン)・副交感神経過亢進などが関連すると考えられます。

使用目標(aim)

本方剤の適応する使用目標は次のとおりです。
●慢性の胃痛がある。
●胸やけする。酸っぱい水を吐く。
●みぞおちに膨満感(ぼうまんかん)がある。
●胃部を押すと、ピチャピチャと水音がする(胃内停水)。
●血色が優れず、冷え症である。
●神経質である。
●甘い物が好きである。


症例・病例・治癒例・case study(case study)

【安中散加茯苓の症例・治例】…次の症例に近い病症の方は、本方剤をお奨めします。

1〈結婚16年目に妊娠した婦人〉

治例図 39歳の婦人。

胃痛を主訴として来院した。腹診すると、腹部に力なく膳部で動悸を触れる。痛みは軽く、圧痛はなく、食欲はあるが痛みを恐れてひかえている。大便は1日1行ある。私はこれに安中散を与えたが、1ヶ月ほどの服用ですっかりよくなって、休薬した。

それから半年ほどたったある日、この患者が来院し、また胃が悪くなって吐くようになったという。診療してみると、妊娠3ヶ月でつわりの症状である。私は、この旨を患者に告げたが患者は、結婚16年になるのにまだ一度も妊娠したことがない。いま頃になって妊娠するはずがないといって素直に私の言を信用しない。そこで婦人科に診せたところ、私の言った通り妊娠で、月満ちて、りっぱな男の子が生まれた。

安中散は胃酸過多症、胃潰瘍、胃下垂症などで、胃痛のあるものによく用いられるが、この処方は元来【疝】(せん)による腹痛を治する目的で作られたものである。この患者が妊娠したのは、疝がこの処方で良くなったためかもしれない。

・現代病名:胃痛

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2胃酸過多

治例図 40歳代の男性。

トラックの運転をしていて、非常に神経を使うため、胃酸過多症がなかなか治らないという。体格はガッチりしているが、小柄な人で、便秘などの症状は特にない。ただ胸やけと、胃痛があるというので、安中散を与えた。

根気よく服用して、約半年以上経ってすっかり胃の調子がよくなった。

・現代病名:胃酸過多症

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3〈痛みを伴う胃もたれを治した漢方薬〉

治例図 Cさん(42歳・女性)の胃のもたれは、痛みを伴っていました。

診察を受けると、おなかが冷たくなっているとのことで、前日の食生活を尋ねられました。冷たいビールを夜遅くまで飲んでいたという話をすると、胃もたれも胃痛もそれが原因だろうといわれました。

出された漢方薬は安中散でした。暴飲暴食で胃の働きが衰え、痛みを伴うときにはよく効くとのこと。翌日には、胃もたれも痛みも消え、食欲も回復してきました。

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・現代病名:胃もたれ

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4〈ストレスによる胃痛

治例図 20歳、女性。体格普通、高校までスポーツをしていましたが、時々胃痛がありました。社会人となり、対人関係でストレスが多く、再度胃痛が続き病院にも通いましたがよくなりません…と父親が来店されました。

とりあえず安中散をお渡ししました。
次回は本人も来店されました。貧血、生理痛、冷え、食が細い、などもあるそうです。安中散で痛みは楽になるとのことなので、生活面、食事法などを説明し、加えて双参を服用してもらったところ、1ヵ月ほどして「気」も大きくなり、生理痛も少なく、体力も増してきたとのことです。現在2ヵ月目に入り、続けて服用中です。食事と生活の注意は守ってもらっています。

弁証論治 リンク胃寒 »

・現代病名:胃痛

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1.桂皮・良姜・薗香・延胡索・縮砂はすべて「温性薬」で、粘膜を充血させ、循環を強めて腹を温める効果がある(温中散寒)。
2.桂皮・良姜・延胡索・牡蛎は鎮痛に働く。
3.茴香・縮砂は制吐・鎮嘔に働く。
4.延胡索・甘草(灸甘草)は平滑筋の痙攣(けいれん)を抑制する(止痙)。
5桂皮・茴香・良姜・縮砂は、蠕動を促進して消化吸収を補助する(理気)。
6.牡蛎は制酸作用をもつ。
7.延胡索は軽度の抗うつ作用をもつ。
(補足)
本方は、冷えによる腹痛に適応し、補益性はない・やせ型とか体力の低下とか神経質などとはあまり関係がない。

中薬構成(herb composition)

神農

桂枝・甘草・延胡索・良姜・牡蛎は桂枝加芍薬湯の変形と見られます。つまり、芍薬に代わって心下痛にはより効果の強い延胡索が入っていますし、生姜の代わりに、同類でより効果の強い良姜が、大棗の代わりに良姜の中和薬として牡蛎が入っていると考えられます。牡蛎には胃酸過多中和作用があり、良姜の熱作用を中和するのにも役立ちます。縮砂・茴香は桂枝とともに芳香性健胃薬、良姜は辛辣性健胃薬で、これに鎮痛薬の延胡索、胃酸過多中和薬の牡蛎、緩和薬の甘草が加わって、安中散が構成されています。さらに加味の茯苓は、臍部の動悸をしずめる作用があります。
構成中薬の大半は温性・補性薬であるとともに燥性薬(体内の水分を排泄する薬)ですから、桂枝加芍薬湯と違って、はっきりと湿証向きと言えます。
胃内停水や胃酸過多のある寒虚証の方の健胃鎮痛剤です。

神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。

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類方鑑別(効き目が似た別の漢方薬紹介)

他剤の効用を示します。証のまぎらわしい処方との鑑別をしめします。
人参湯(理中丸)…冷え症で、血色がすぐれず、胃腸が弱く下痢しやすく、口中にうすい唾液がたまり、うすい尿を出し、時に腹痛を訴える場合に用いる。(裏寒に対する基本方)
六君子湯…胃腸虚弱で顔色が悪く・心窩部の振水音が著明で、胃部膨満感・食欲不振、倦怠感、手足の冷えがあり、腹痛をあまり訴えない場合に用いる。(脾虚疾飲)
四君子湯…六君子湯に比べ、一層体力が衰えている場合に用いる。(気虚の基本方)
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備 考(Remark)

中医師 ●主治:胃寒疼痛
●効能:温中降気・止痛

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