●白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう) 暑気あたり、日射病、熱射病、風邪、糖尿病、かゆみが強い皮膚疾患!
〈糖尿病〉
昭和5年生まれの男性。背は高いがやせている。食欲もあり、元気もあって仕事熱心な人である。健康診断で、糖尿病初期と言われたという。病院の薬や漢方薬を買って服用したが、調子がよくないという。非常にのどが渇き、寝るまで水を飲んだりしている。尿もそのためよく出ている。夜間も2、3回は排尿に起きる。実証タイプなので、白虎加人参湯を投与したところ、口渇は次第に減少し、疲労もなくなって、尿利も正常になった。当初話さなかったが夫婦生活も正常に戻ったと報告をうけた。その後も服用をつづけている。
〈口渇が激しく、左手がだるく口きどころがないという患者〉
49歳の女性。経閉後、肥満し、血圧が高くしばらく大柴胡湯をのんでいたが、3〜4日前に感冒にかかり、左手が置くところがないほどだるいという。そのためよく眠れない。脈は浮で力があり、体温は38度を越している。悪感があり、発汗はみられない。私はこれに、麻黄加乖湯を与えたところ、発汗したけれども、軽快の様子がみれない。かえって、食物の味がなくなり、のどがひどく渇くようになった。そこで白虎加人参湯を与えたところ、たった1日分で全快した。
〈夜尿症〉
10歳の少年。毎夜遺尿をするという。体格、栄養、血色ともに普通である。床につく前にのどが乾くといって、水をがぶがぶのみ、どうしてもやめないという母の言葉にヒントを得て、白虎加人参湯を用いたところ、口渇が止み、遺尿も治った。
〈全身アトピーの小1女児〉
小学校1年生の女児。
全身のアトピー性皮膚炎で、皮膚は乾燥して赤く、痒いのでかくと落屑が粉のように落ちる。毎晩1〜2回起きて全身を母親にかいてもらうという。食欲もあるし、口渇も強い。いろいろの手当てをしても効果が上がらなかったという。
問診すると汗をかかない子であると母親がいう。そこで汗腺の調節作用のある桂麻各半湯と白虎加人参湯を与えた。約2週間のむと少しずつ痒みが減っている状態になったが、口渇が甚だしいことと、異常に皮膚が乾燥し、座席に粉をまいたように落屑がでるのを目当てにして越婢加朮湯を与えたところ、2週間、4週間と経過がよく、皮膚に潤いがっき、痒みが減じ、約半年で完治に至った。学校で同級生たちにきれいになったといわれ、子供は喜んでいますと母親が言っていた。越婢加朮湯は皮膚疾患の場合、皮膚の「乾湿」はあまり考えなくてもよいといわれる。