猪苓湯の症例・治例

効果この症例に近い病症の方は、この方剤を用いることをお奨めします。

事例蘆溝橋・欄干(獅子の彫刻)●猪苓湯(ちょれいとう)  止血効果の高い、泌尿器系の代表的利水剤。排尿痛、残尿感、血尿に!


1〈老人の鬱病〉

77歳、女性。
九州福岡在住。年に1、2回上京して、当薬局近くの娘さんの所に滞在する。あるとき上京中、一日中だるくて、特に両足に力が入らないので寝ているという。ご主人を亡くして2年目。娘さんの話では、福岡の主治医は高血圧と欝病という診断とのこと。カラン、アバン、セレナール、アドナ、カルシウム拮抗剤などが出ていて、新薬の相互作用も無視できな)`本人は、153c皿、52s。顔に生気がなく、サンダルを引きずってきた。食欲はふつう1日3回食べる。大便は1日1〜2回、小便は日中10回以上で、夜は2時間おきなので煩わしい。舌は微白苔で乾燥。目も乾き瞼が熱く、麦門冬湯をのむと調子よい上、夜の小便が減少してよく眠れるという。新薬をのんでからは、汗が多く、時に頭痛もするという。
あまり自信はなかったが、猪苓湯と香蘇散の交互服用とする。服用初日は、大便1日8回。だが下痢ではない。2日目は6回、3日目は3回出て、身体がすっかり軽くなり、足を引きずって歩くことはなくなった。自信がでて、新薬は次第に減らしたようである。福岡へ帰られてからは薬は郵送している。血圧は下がり、目の乾燥は治り、よく眠れて大便も正常になった。以後、約1年間経過。1ヶ月分の漢方薬を3ヶ月くらいにのみ延ばしている。猪苓湯は尿の不利と煩があり不眠の傾向がある。香蘇散は鬱傾向に効果がある。

2〈排尿痛と残尿感〉

65歳、女性。
隣町に住む農家の主婦である。尿の出が細く、排尿痛と残尿感があり、すっきりしない。仕事上、シートをひいたコンクリート床で作業をすることが多い上にトイレもがまんしている。腰より下が冷える感じがする。体格、肉付きは普通である。
まず、排尿時の苦しみを取ることを目標にして、猪苓湯とナリジクス酸を与えた。排尿痛がとれてきたら、ナリジクス酸の服用を止め、猪苓湯単味のみの服用とするように指導、仕事の時も床の冷たさが直接体に伝わらぬように工夫してもらうようにした。
後日、来店された際に聞くと痛みは消失し、残尿感もほとんど消えていた。

3〈結石による血尿が10日で治まる〉

医師のSさん(60歳・男性)は、過去に何度か尿路結石を患い、再発するたびに薬を用いて治療をしていました。
そしてある日、腹痛を感じてトイレに行くと血尿が出てしまいました。同じ医師仲間で漢方薬を用いて治療を行っているT医師に、以前から「漢方薬で結石治療をしてみたらどうか」と勧められていたこともあり、Sさんは、そのT医師に相談してみることにしました。
T医師から勧められたのは、芍薬甘草湯と猪苓湯でした。さっそくこの2つを朝夕交互に飲みはじめると、やがて結石が尿とともに排出され、服用から10日目には血尿が完全に消えました。その上、血圧も安定し、体調もすこぶるよくなったのです。
それからというもの、結石の再発予防と体調管理のため、1日1回猪苓湯を飲み続けているそうです。

唐太宗・李世民 朱雀